2017年8月29日

パターソンと購書

ジム・ジャームッシュの映画『パターソン』を観てきた。ニュージャージー州のパターソンという町に暮らす、ある男の、ある一週間のできごと。男はバス運転手で詩を書く。くり返す一日、細部のざわめき、ちいさな事件、しずかなカタストロフィ。まるで詩人のような気持ちで、日々を過ごしてみたい。あるいは詩人になれない自分のままの気持ちで、詩を書いてみたい。そういう気持ちになった。
映画は新宿で観たのだけれど、電車に乗る前にCORALの啓文堂書店を覗くと、左右社の新刊『天の川銀河発電所』が入荷していた。購入。現代俳句のなかでも1968年以降に生まれた世代の俳人たちに限定したアンソロジー。近所の本屋で見つけられてよかった。ちなみに水中書店でも近日中に入荷の予定です。

2017年8月17日

水中で

八月。半ば過ぎ。雨が多い。どうにか明るい前向きなことを書きたい。…………。最近心動かされたのは、そういうなかでも本を買ってくれるひとがいるということだ。天気の話は置いておいても、今の時代本を買わない理由ならいくらでもある。景気はよくないのだろうし、みんな忙しくて本を読む時間がなかったり、読書ではない別の娯楽も多いはず。それでも一冊の本が売れるというのは、そのひとのその本への好奇心や憧れがそれらの要因に勝ったということで、それはすごいことだと思う。そういう一冊の移動を、古本屋の棚から誰かの手への移動を、積み重ねていきたい。


来月17日、18日に開催のIndependent Bookstore's BOOK FESの準備をすすめている。はじめて参加した2014年の棚の写真がPCのフォルダにあり、合間に懐かしく眺める。まだ店舗の棚も埋まっていなくて、本が足りずに苦し紛れに私物の本もけっこう出した。苦渋の想いで出したが、そういう本に限って売れなくてそれも辛かった(今野くんが好きな本は売れない、というHさんの言葉が思い出された)。あのときはTIGER BOOKSが売り上げでは一番で、上機嫌のKさんは「Cat's Cradleの近くで実店舗を出したい」と快活だった。あれから三年。時が経つのが早い。


三年前には中学生だった常連の男の子も、もう大学受験を控えていたりする。「八歳と十歳の隔たりは単に二年の差ではない。何十年にも相当する深い溝がそこにはある。のちに君が二十歳から四十歳にかけてカバーする距離に等しい、人生の一時期から別時期への途方もない跳躍である」。ちょうど読み終わったオースターの本に出てくる一節。よく店に来てくれる彼は八歳や十歳ではないわけだけれど、それでも自分の眼からするととても凝縮された数年間を過ごしている。そういう時期に、彼の生活のメインストリームの端にであれ、水中書店があるというのはうれしい。


日記のようにあったことを淡々と書いてみたいのだけれど、うまくいかない。昔から日記をつけるのが苦手だ。学生のころ、飽きないように毎日文体を『人間失格』風、西村京太郎風、サン=テグジュペリ風(と言うよりは内藤濯風)と変えながら日記をつけてみたことがあった。あまり続かなかった。先にも引用したオースターの本で、作者自身も若いころ日記をつける習慣が身につかなかったと書いていた。「日誌でわからないのは、いったい誰に向けて語ればいいのかだった」。「現在に没頭するあまり、実は未来の自分に宛てて書いているのだということが見えていなかったのだ」。


一方で、ひとが書いた日記や、日記のかたちがとられた文学作品に惹かれる。俳句に惹かれるのも、この詩形に何となく日記のような味わいがあるからだと思う。ある俳人が、句集をつくるとき、時系列ではなく、四季別で句を並べると、季節を口実に別々の時期にできた句もランダムに並べることができて句集の欠点が見えづらくなると書いていた。句がうまく作れる時期、あまりうまく作れない時期があるものだから、時系列では「このあたりの句がよくない」というのが見えてしまうと。それを読んで、それでは自分が惹かれている「日記らしさ」が薄まってしまうのではないか、と思ったのを思い出した。とは言え四季別の並びの句集にも好きなものは多いのだけれど。


最近読んだ本では荻原魚雷『日常学事始』が抜群に面白かった。二頁か三頁の短いコラム集で、生活の実践にあたっての著者なりの発見や、経験に裏打ちされたコツ、考えていることなどがユーモアある文体でまとめられている。文章の高すぎない密度が心地よく、ずっと読んでいられる。最後の数行でオチをつける巧みさに、実はまだその意味をよく理解していない「コラム」なるものの醍醐味を直観する。「野球の野は野菜の野」「デカルトの悲劇をごぞんじですか?」など名言、名台詞が多い。そのほかではポール・オースター『内面からの報告書』。そのなかに、作者がまだ若いころ、最初の妻となる前のリディア・デイヴィスに書き送った手紙が引かれていて、そこで見つけた一文を。「良い本を見つけて水中で読み給え」。1969年6月11日の手紙から。

2017年8月12日

お盆休みのお知らせ

今年のお盆休みはどうしようか、と考えつつ決めかねていて、もう八月半ばなので今月中の休みを今更告知するのではお客さまには不便な話だな、ということで来月のあたまに休みをとることにしました。下記のようなかたちで4日(月)から6日(水)まで定休日をはさんで三連休にしてみます。ゆっくり本でも読みたいです。

9月2日(土)営 業
9月3日(日)営 業
9月4日(月)お休み
9月5日(火)定休日
9月6日(水)お休み
9月7日(木)営 業

それでも臨時休業ですのでご不便をおかけする方もいらっしゃると思いますが、何卒ご理解のほどお願いいたします。

2017年8月3日

Independent Bookstore's BOOK FES 2017

お知らせです。
今年も早稲田のブックカフェCat's Cradleが主催するIndependent Bookstore's BOOK FESに参加させていただくことになりました。日程が例年よりも一月ほど早いのはCat's Cradleが来月末でお店を閉めてしまうからで、今回が最後のBOOK FESとなります。思い返してみると、水中書店を開店した2014年の第一回から参加させていただいていて、個人的にも思い出の詰まった場所とイベント。これが最後になってしまうのはとても淋しいですが、水中書店らしい棚をつくって少しでも多くの方がCat's Cradleに足を運んで下さるようにがんばりたいところです。
近いうちに配布をはじめるBOOK FESのチラシの画像データを送っていただきました。



くれぐれも勘違いがあるとけないのですが、BOOK FESのある9月17日~18日でお店を閉めてしまうわけではなく、お店は9月末まで営業する予定とのことです。自分もBOOK FESが終わった後にでも(当日は設営、撤収などでバタバタするので)ゆっくりお茶と読書をたのしみに足を運びたいと思っています。

以下、詳細です。チラシと内容は重なりますが。

Independent Bookstore's BOOK FES 2017

Cat's Cradle
早稲田鶴巻町538岩田ビル1F

2017. 9. 17~9. 18
10:00~18:00

CAST
クラリスブックス
15時の犬
古書ソオダ水
葉ね文庫
古本ブックエンド
忘日舎
よこわけ文庫
らせん堂
古本ユニットricca
レインボーブックス
水中書店

今回、水中書店は詩集、歌集、句集を中心に棚をつくろうと思っています。なにか特別なモチベーションがない限り、このBOOK FESの後はしばらく外売りを控えるつもりでもいて、そういう意味でも、こう、力を出し切りたいというか、よい棚をつくりたいという気持ちです。クラリスブックス、15時の犬、葉ね文庫など、いっしょに参加する各店も面白い古本屋ばかりです。ぜひ足をお運びください。よろしくお願いします。